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御子柴細胞制御プロジェクトシンポジウム講演要旨集
Vol. 1 (2000) p.1
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神経成長におけるカルシウムシグナル制御機構
竹居 光太郎1)
1) 機能分子·膜動態グループ
  神経系の成長·発達における神経成長円錐内のカルシウムイオン(Ca2+)の役割について細胞内カルシウムストアからのCa2+放出に着目し、鶏卵胚の培養背根神経節(DRG)細胞を用いて検討した。種々の薬理学的阻害実験やノックアウトマウスを用いた実験の結果から、イノシトール3リン酸(IP3)受容体(IP3R)を介する細胞内Ca2+放出が、神経成長における重要な制御因子であることが分った。特定分子を局所的に不活性化できるレーザー分子不活性法(CALI法)によって、成長円錐内に存在する1型IP3Rが担う細胞内Ca2+放出が神経突起の伸長を制御する重要なシグナルであることが明らかになった。次に、神経成長におけるIP3Rのシグナル伝達経路の下流分子を検索するため、種々の薬理学的阻害実験を行った。細胞内カルシウムストアからのCa2+放出を阻害して生じる神経突起の伸長阻害は、細胞内cGMPを上昇させることで有意に緩和された。また、一酸化窒素(NO)合成酵素(NOS)は神経成長円錐に存在し、その活性を薬理的に阻害すると有意に神経突起の伸長が抑制された。これら一連の実験結果より、細胞内カルシウムストアからのCa2+放出はNOSを活性化してNOを産生し、その結果細胞内cGMPを上昇させて神経突起の伸長を促進すると考えられるCa2+依存性のシグナル伝達経路の存在が示唆された。

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