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加藤たん白生態プロジェクトシンポジウム報告資料
Vol. 1 (2000) p.31
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細胞内タンパク質の新規糖修飾の発見
亀村 和生1)
1) 蛋白解析グループ
  糖鎖生物学を築き上げてきた先駆者達によって、分泌タンパク質や細胞膜に分布する膜タンパク質のほとんどが、小胞体やゴルジ体内腔で多様な糖鎖修飾を受けて成熟分子になり、それらの糖タンパク質糖鎖がレクチンなどを介して細胞間コミュニケーションや細胞外からのシグナルとして機能していることが明らかにされてきた。さらに、これらの糖鎖と種々の疾患との関わりも示唆されている。対照的に、細胞質や核のタンパク質はそれらの生合成や分布が細胞内膜系とは無縁であることから、糖鎖修飾を受けないというのが従来の定説であった。しかしながら、近年のHartらによる核ならびに細胞質タンパク質のO-GlcNAc化の発見により、その定説が覆された。O-GlcNAc化とは、タンパク質のセリンあるいはスレオニン残基にO-グリコシド結合でN-アセチルグルコサミン一分子が転移されることである。O-GlcNAc化は、細胞質や核に存在するO-GlcNAc転移酵素とO-GlcNAcaseによって媒介される可逆的な反応である。細胞内膜系とは独立に存在するO-GlcNAc修飾系の発見は、(a)細胞質や核におけるタンパク質-タンパク質相互作用·情報伝達系に糖タンパク質糖鎖-レクチン相互作用が関与している可能性、そして(b)細胞質や核にO-GlcNAc化以外にも多様な糖鎖修飾系が存在する可能性を示唆した。そこで、本研究においては、まずヒト完全長cDNAバンクの中から未知レクチンcDNAを同定し(a)の可能性を追究するための新しい手法として、高感度レクチン検出法を開発した。また(b)の可能性を検討するため、大量に入手可能な細胞質酵素類を用いて糖鎖解析を行ったところ、ウサギ筋細胞質クレアチンキナーゼがグルコース(Glc)によって修飾されていることを見い出した。

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