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加藤たん白生態プロジェクトシンポジウム報告資料
Vol. 1 (2000) p.21
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新規核蛋白質複合体Npw38-NpwBPの発見
小室 晃彦1)
1) 動態解析グループ
  我々は現在約4,000種類のヒト完全長cDNAからなるホモ·プロテインcDNAバンクを有している。本プロジェクトの研究目標の一つは、この中に含まれている新規蛋白質の機能解析である。ホモ·プロテインcDNAバンクには蛋白質-蛋白質相互作用モチーフをもつ新規蛋白質が数多く存在するので、演者はこれらの蛋白質をターゲット蛋白質として、相互作用する蛋白質の探索を行うことによって、新しい蛋白質ネットワークを見つけることを目指した。具体的なターゲットとして選んだのは、クローンHP10345がコードしているWWドメインを有する新規蛋白質である。分子量が38kDaであり、核に局在することからNpw38(Nuclear protein containing a WW domain with a molecular mass of 38kDa)と命名した。WWドメインとは、約40アミノ酸からなるモジュールであり、WW(WWP)ドメインの名はその一次配列内で高度に保存された2つのトリプトファン残基(W)と1つのプロリン残基(P)に由来している(本報告書研究成果集参照)。蛋白質-蛋白質相互作用を担う他のいくつかのモチーフと同様に、WWドメインも機能的には無関係な多くの蛋白質中に見出される。例えば、蛋白質分解に関係があるユビキチンリガーゼNedd4、細胞周期の分裂期の制御をしているPin1、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの原因遺伝子産物であるジストロフィン、YAP、FBP、その他いくつかの未解析蛋白質などがWWドメインを有している。WWドメインが結合する蛋白質の結合領域の特徴として、プロリンに富んだ配列があげられ、PPXY、PPLP、PGMモチーフなどが知られている。また最近、Pin1が細胞周期のM期に特異的にリン酸化される蛋白質群と相互作用することやアルツハイマー病関連のTau蛋白質の変性を抑制することなどが報告された。しかし、WWドメインはまだ発見されて間もないドメインであり、生理的機能の解明や結合するパートナーの同定はそれほど多くはなされていない。そこで、本研究では、Npw38のパートナーの同定、その結合配列の同定などを通して、WWドメインを介する新しい蛋白質複合体の存在を明らかにした。

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